チベットのウシアタマ

｢聖地チベット」展を見に行き、新しく学んだことは、チベット密教ではヤマ神（ヤマーンタカ）は牛頭だということだ。ヤマ神はバリ・ヒンドゥーの神様でもあるのでなじみがある。黄泉の国の神だ。日本でいうと閻魔大王にあたる。しかし牛の頭じゃなかったと思うぞ。

「牛」のむおーんとした穏やかなイメージではなく、牙を向いて怒っている姿をしている。神様が憤怒の相で人間や悪霊を踏みつけている表現はよく見る（今回の展覧会では，そうした足元の人間たちは｢煩悩」の象徴だと説明されていた）。ヤマ神が踏んづけているのは、牛だった。

チベット仏教に基づく仮面劇チャムにも登場するらしく、仮面が一つ展示されていた。しかもこちらは、らほつ（くるくるのパーマヘア）がついている

たまたま前日読んだエッセイの中に｢牛頭大王｣という言葉を見かけていたこともあって、なんとなく気になったので、帰宅後にウェブで検索してみたところによると、「牛頭｣の神のイメージは仏教とともに日本にも入ってきて、そこでスサノオと習合して「牛頭天王」になったらしい。

｢頭がたくさん積み上げられている｣イメージ以外に、牛頭のヤマ神、馬頭の馬頭観音、象頭のガネーシャなど「ニンゲンじゃない頭＋ニンゲン風の身体」というのも一つの神のかたちとして、確立されたものがあるなあと思いました。